説明
雪の上に小さな足跡が続いています。その先にいたのは野ウサギ。のんびりひなたぼっこをしているように見えますが、耳だけはピンと立っています。敵を警戒しているのです。そのとき風を切るような音がしました。空からクマタカが襲ってきたのです。はたして、逃げ切ることができるでしょうか? エサが少なく厳しい冬を、野ウサギはこうして敵から逃げながら生き延びます。そのために、ピンと立った耳と、長い足が役に立ちます。やがて、生き延びたオスとメスとが出会って、春にかけて子ウサギが生まれるのです。
雪国の冬に繰り広げられるごく自然な日常ですが、それは生死を賭けたドラマです。長年、東北の雪の中、雪崩の研究のかたわらで、野ウサギの生態を観察し続けた著者が描写するドラマを、動物画の第一人者薮内正幸が精緻に描きました。モノクロの絵が、雪の中の世界を生き生きと映し出します。
著者について
高橋喜平
1910年岩手県生まれ。長年、独学で雪崩の研究に従事し、1971年に国立林業試験場を退職。エッセイストとしても知られており、1960年に日本エッセイストクラブ賞を受賞しているほか、日本雪氷学会賞、吉川英治文化賞、岩手日報文化賞を受賞。2006年、没。
藪内正幸
1940年大阪府生まれ。幼少の頃から動物に親しみ、動物のイラストレーターとして図鑑、百科事典、絵本、童話などを幅広く手がけた。主な著書に『冒険者たち』(岩波書店)、『野や山にすむ動物たち』『海にすむ動物たち』(以上岩崎書店)、『野鳥の図鑑』『どうぶつのおやこ』(当社刊)など。2000年、没。
出版社:福音館書店 (2019/4/17)
発売日:2019/4/17
言語: 日本語
単行本:24ページ